子供に見せるべき作品について (その2)

るなーんさんへ.


このブログを書いている者です.始めて間もないブログですが,読んでくださる方がいらっしゃるのは嬉しいです.また,コメントまで頂き,大変有難く思います.


お返事が遅れて申し訳ありませんが,頂いたコメント

http://dayinthelife.at.webry.info/200508/article_14.html#comment (リンク切れ)

について,私の考えを述べさせていただきたいと思います.最初はコメント欄に書いていたのですが,ちょっと長くなったので独立したエントリにいたしました.どうかご了承ください.


まず,ドラえもんの映画の件です.私は趣味といえば読書で,アニメはあまり見ません.このエントリに書いたように,映画ドラえもんについても10年くらい前に見たときの感想ですし,子供向けで,他にもっとよいものはあるかもしれません.もしそのような作品をご存知でしたら,ご教示いただければ感謝いたします.このエントリに書いた男の子の誕生日祝いに,アニメのDVDか本を贈ろうとしたことがあったのですが,店に行っても何が何やら分からなくて往生したことがありますので.


次に,まんが日本昔ばなし(以下,日本昔話)の件です.これについては,私はるなーんさんとはやや異なる見解を持っています.この記事(リンク切れ)によれば,日本昔話がはじまったのは1975年とのことです.しかし,70年代でも,一般家庭における,豊かな地方文化としての昔話を伝承する機能というのは,ほぼ無くなりつつあったのではないでしょうか.たとえば私は,この70年代に,祖母から子守唄代わりに昔話を聞いたことがあります.おそらくそのような最後の世代でしょう.しかし,その際に聞いた昔話は,花咲かじいさんのようなメジャーな話ばかりだったように思います.これは単なる私の個人的経験に過ぎず,それをもって結論付けるわけでは勿論ありませんが,その後得た知見でもそのように実感しておりますが,いかがでしょうか.結局のところ,70年代においてすら,豊かな地方文化としての昔話は,文献をあたるか地方の古老にでも聞くしかなかったという状況だったのではないでしょうか.言い換えれば,日本昔話があろうが無かろうが,昔話は(有名なもの以外は)ほぼ滅びる運命にあり,それを保存するためには明確な努力が必要とされていたというように感じております.なお,以上については地方ごとに異なる事情もあるでしょうから,あくまでも私の印象ということでご理解いただきたいと思います.


また,日本昔話には,おっしゃるような問題はあることは理解しております.TVメディアですから,昔話にありがちな残酷な話やタブーに触れるような話は選択されなかったことでしょう.また,一つの物語における,各地方毎の差異なども無視されるか単純化されたのではないでしょうか.さらに,TVの持つ圧倒的な影響力により,日本昔話における昔話が,視聴者の間で固定化されることはあったと思われます.


しかしながら,日本昔話の功績の面も考えなければ,公平とはいえないのではないかと思います.たとえば,一般家庭における地方文化としての昔話の伝承機能が失われつつあった時代,制約はあるにしろ,その機能の一翼を担ったと言えはしないでしょうか.また,952回(上記URLによれば1500話くらいか.これは延べ数?)も放送されたとのことですから,日本のさまざまな地域の昔話に触れられる機会があったと考えられましょう.何より,単純にいって面白かった.また,アニメ画,ストーリー,音楽,どれをとってもクオリティが高かったと思います.この放送を機会に昔話に興味を持った視聴者は相当数いたはずで,それこそがTV時代の新たな伝承形態なのかもしれません.


まとめていえば,日本昔話には功罪ありますが,功の方が大きかったのではないか,というのが私の見解です.いかが思われますか?


最後に,宮沢賢治や新見南吉や小川未明の作品が子供にとってよいか悪いかについて.「よい」という言葉のとらえ方が難しいですが,よいとはいえるのではないでしょうか.ただ,それらの作品を全員の子供が面白いとは思うということはないでしょうね.たとえば,私は11歳くらいのときは,図書館にあった江戸川乱歩の怪人20面相の本を夢中になって読んでました.このころ,生まれて始めて読んだ文庫本が,実家にあったエラリー・クイーンの「Yの悲劇」で,この本には大変思い入れがあります.それについてはいつかこのブログに書きたいと思っています.


話はそれましたが,やや教科書的な選択というか,子供の観点からの視点がないという指摘でしたらそのとおりかもしれません.自分でそういう態度を批判していながら,こういうことを言うのはなんですが.ただ,宮沢,新見,小川の作品は,私自身小さいころに読んで面白いと思いましたし,子供に見せる本のリストに入れるのは全く問題ないと思いますが,いかがでしょうか.もちろん,読書一般にも当てはまる話ですが,これだけ読めばいいというような作品を指定することは出来ませんので,彼ら以外の本で,いわゆる子供向けの良書というのは多いでしょう.それを否定しているわけではありませんので,それはご了解いただければと思います.また,彼らの作品に対する批判,あるいは,それ以外に推薦する本などがありましたら,教えていただければ幸いです.


まとまりなく,思うことを書いてきましたが,以上が私の考えです.またコメント等ございましたら,よろしくお願いいたします.


P.S.


それにしても,子供に見せるべき作品というのは難しいですね.私も明確な解答を持っているわけではありません.読書という体験が極めて個人的なものである以上,究極的には子供それぞれについて考えてみないといけないということになるのでしょうか.私の経験から言っても,他人に面白い本をすすめるのは難しかったですし,また他人が面白いといった本でも,面白いと思わないことの方が多かったかもしれません(自分の専門分野以外では).ただこれにも例外があって,父親から薦められた,「人間の大地」(犬養道子)と「レ・ミゼラブル」(ヴィクトル・ユゴー)は大変感銘を受けました.これらについても,いずれはこのブログに書きたいと思っています.

コメント

このブログの人気の投稿

LaTeX メモ - 数式における「|」 (縦線, vertical bar)の扱い(その2)

人間はどんなところでも,どんな時でも何歳からでも学ぶことができる

ブログを始めるにあたって - 継続は力

へんろう宿 (井伏鱒二)

イエスは地面に何を書いていたか