投稿

6月, 2010の投稿を表示しています

母の眼 (川端康成,「掌の小説」所収)

以前, 掌の小説 (川端康成)  というエントリを書いたのですが,それに対して以下のようなコメントをいただきました. はじめまして、 あの、、、『掌の小説』の中で母の眼という作品について聞きたいことがありまして、 何の意味かなかなか分かりませんね。ですので、あなたの考えがほしいんです。 たとえば、このタイトルはなぜ母の眼なのか。 最後の部分に書いてる「子守女の顔に何と明るい喜びだ。」ここの意味は何だと思ってますか。  https://dayinthelife-web.blogspot.com/2005/08/blog-post_7.html   私は特に教養があるわけでもなく,書評のようなものをこのブログに書いてはいますが,その解釈についても浅かったり間違ってたりするところが多々あるのではないかと思っています.しかし,せっかくのお尋ねでもありますし,自分の考えを書いてみることにしました.少し長くなってしまったので,コメント欄に書くのではなく,独立したエントリにしてみます. この小説のキーとなるのは,「美しい子守女」と「母の眼」ということではないかと思います.まず子守女についてですが,少なくとも戦前までは,貧しい家の年端もいかない女の子が,口減らしやお金を稼ぐために,子守女として奉公に出ることがよくあったようです.このような,子守女としての境遇はつらいものだったようで,子守唄のメロディに悲しいものが多いのは,そのためではないかと思っています.そのあたりの事情については,ざっと検索してみたところでは,たとえば以下のページに詳しいようです. 子守唄にみる幼児労働 http://komoriuta.cside.com/report/kanj20021101a.html 五木の子守唄と子守唄の里 http://www.kumamotokokufu-h.ed.jp/kumamoto/shoukai/ituki_k.html この小説の主人公である子守女も,このような境遇だったと思われます. ただ,彼女は美しかった.そして,自分の美しさを十分自覚していたが故に,彼女は大きな自尊心を持っていたのだと思われます.これは,この子守女は,勤め先の宿屋の女中など相手にしなかったところからも見て取れます.彼女がおかれた境遇も,かえってその自尊心を強めることになったのかもしれません. そして,