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飼い犬があなたに伝えたい10のこと

以前このブログで書いたように,中学1年くらいのとき,犬を飼い始めた.その犬は,だいたい10数年生きて,死んでしまった.今はさすがに悲しいという感情はほとんどないが,その犬が死んでるのに,私がまだ生きているという事実に,何か不思議な,あるいは理不尽な感覚は持っている. それで思い出したのだが,以前,tumblr で以下のようなエントリを見かけた. 10 Things Your Dog Would Tell You.. (拙訳: 飼い犬があなたに伝えたい10のこと) http://magicalnaturetour.tumblr.com/post/28999482348 このリストの最初の項目を読んで,ちょっと涙が出てきてしまった.犬を飼ったことがある方にはお分かりいただけるのではないか. こうした,出所も内容の真偽も不明なリストは普段はスルーするようにしてるのだけれども,どうも日本語訳も見当たらないようだし,たまには見逃していただいて,その拙訳を以下に載せておきたいと思う. 飼い犬があなたに伝えたい10のこと 私の命は10年から15年くらいしかありません.どんな形であれあなたと別れるのはつらいのです.そのことを,私を飼おうとするときは気に留めておいてください. あなたが私に望んでいることを,私が理解するまで,待っていてください. 私を信頼してください.それが私の幸せにとって一番大切なことなのです. 長い間ずっと私に怒ったりしないでください.また,罰のため,私を閉じ込めたりしないでください. あなたには,仕事があり,楽しみがあり,友人がいます.私にはあなたしかいないのです. ときどき私に話しかけてください.あなたの言葉を理解できなくても,私に話しかけるあなたの声は分かるのです. 覚えておいてください.あたなが私をどのように扱おうと,私はそれを決して忘れません. あなたが私をぶつ前に,思い出してほしいことがあります.私は簡単にあなたを傷つけることができる牙を持っていますが,私は決してあなたに噛みついたりしません.あなたのことを愛しているからです. 言うことを聞かないとか,いこじだとか,怠けものだとかいう理由で私を叱る前に,私が何か思い煩っていないか,考えてみてください.ちゃんとした餌を与えられていないかもしれないし,ずっと外に放置しておかれてるかもしれないし,年をとって私

暖簾 (山崎豊子)

小説家の処女作にはその作家のすべてが含まれるといったことは,よく言われることだ.もちろんすべての小説家にあてはまることではないけれども,そのように考えてみると,何人かの小説家のことが思い浮かんでくる.ここでは,そうした小説家であろうと私が考える,山崎豊子と,その処女作「暖簾」(のれん)について書いてみたい. 私が初めて山崎豊子の小説を読んだきっかけは,詳しい状況は忘れたが,大学のころ,友人が白い巨塔をすすめてきたことであった.それから山崎の長編はいろいろ読んだが,内容はすっかり忘れてしまった.ちなみに,私には,フジテレビで放映されたドラマの白い巨塔 ( Wikipediaの記事 ) が印象に残っている.最初から最後まで見たテレビドラマはこれが最後で,今後もう二度とないかもしれない.恥ずかしながら,年甲斐もなくぼろぼろ泣いてしまう回もあった.特に,唐沢寿明はいい役者だと思った. 話をもとに戻すと,「暖簾」は山崎豊子の処女作で,昭和32年に出版された.終戦から12年たち,高度経済成長が始まったころである.それでも戦争の傷跡は当時まだ生々しかったのではないか.このような時代背景のもとに,「暖簾」は出版間もなくベストセラーになったという.まさに,ベストセラー作家としての山崎の出発点である. 「暖簾」は,明治29年に淡路島から大阪に出てきて,それから昆布商人としてのしあがった吾平が,戦争ですべてを失い,その後,吾平の後を継いだ息子孝平が,店を再興するまでの物語である.こうした父子二代に渡る大河ドラマのような筋書きも,まさに後の山崎作品のいくつかの長編ストーリーを彷彿とさせる. そして,この「暖簾」で描かれるのは,著者が言うように,大阪船場の「理想の」商人である.大阪で生まれ育った山崎は,大阪商人に深い思い入れがあったのだ.そしてそういった大阪商人の象徴が,暖簾なのである. こうした大阪商人と,浪花屋の丁稚時代の吾平(このときの名前は吾吉)の様子を,以下に引用してみよう. (中略,吾吉は)旦那はんや,番頭はんの走り使いに追われた.「吾吉っとん」と声がかかると間髪を容れず,「ヘーイ」と答え,用事をいいつかるまでに腰を上げてつま先だち,聞き終わるや,草履をつっかけて表へ飛び出す.その機敏なこつを呑み込むまでは,ノロマ!ドンクサイ!と口汚く罵られた. ある日,吾吉が蔵から昆布を運び出