ウェブの書斎,新潮社オンデマンドブックス

ここ10年くらいの傾向であろうが,本が絶版になるまでの期間がどんどん短くなっているように思われる.ちょっと前の本を読もうにも,入手するのに大変苦労する.特に,文芸作品にそのような傾向が強いのではなかろうか.たとえば,私が初めて福永武彦を読んだのは大学生のころで,そのころでも福永の多くの作品は絶版であったが,まだ新潮文庫で4冊くらい,他には,中公文庫,河出文庫,ちくま文庫などで出版されていたように思う.ところが,最近ではそれらは軒並み絶版となっており,新潮文庫で「愛の試み」と「草の花」が読めるくらいである.端的に言えば売れないから,ということであろうが,それにしても残念な状況である.


そこで,大日本印刷と新潮社が行っている,オンデマンドブックスという試みに注目している.


ウェブの書斎
http://www.shosai.ne.jp/


新潮オンデマンドブックス
http://www.shosai.ne.jp/shincho/index.html


このオンデマンドブックスというサービスは,現在絶版などで入手可能な本を,注文を受けてから一冊単位で印刷・製本するというものである.新潮オンデマンドブックス既刊一覧(2006年9月30日現在全401点)は,http://www.shosai.ne.jp/shincho/old_writer.html にある.「死の島」など,福永武彦の作品が充実しているのが嬉しいところである.


メモとして,福永武彦以外で,私が注目している作品をリストアップしておきたい.いずれも読んで感銘を受けた本であり,このような本がオンデマンドブックスとして入手できる可能性があるのはありがたいことである.


  • 有吉佐和子「助左衛門四代記」
  • 井上ひさし「國語元年」「ドン松五郎の生活」
  • 倉橋由美子「アマノン国往還記」
  • シェイクスピア/福田恆存(訳)「ロミオとジュリエット」「十二夜」
  • 辻 邦生「北の岬」
  • 富田常雄「姿三四郎(上中下)」
  • 室生犀星「性に眼覚める頃」
  • 森田誠吾「魚河岸ものがたり」
  • 山口 瞳「江分利満氏の華麗な生活」


私は,このオンデマンドブックスで福永武彦の本を購入した.ただ,本の体裁は,ハードカバーではなくソフトカバーで,大きさは四六変型判であり,正直なところ,値段は高目という感じがする.しかし,一冊づつ注文を受けて印刷するという形態であるから,このような価格設定になるのは仕方がないことなのだろう.そこで,コンピュータ画面上ではなく紙の本で読みたい人,古本は苦手な人,出版文化に貢献をしたい人などに特におすすめしたいと思う.


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