宇宙の無限と人間の小ささ

一週間ほど前になるが,以下のような記事を見かけた.


ブラックホール、あと500年で衝突か 「超接近」発見
http://www.asahi.com/science/update/1201/TKY201012010175.html


 約500年でぶつかるほど近くにある二つの超巨大ブラックホール(BH)を、国立天文台や岐阜大、名古屋大の観測チームが見つけた。重さは太陽の8億倍と12億倍。お互いの距離は0.02光年で、どんどん接近している。宇宙の歴史から考えると、500年は衝突直前に等しい。BHが衝突、合体して大きくなっていくという仮説の有力な証拠になりそうだ。1日付の米専門誌に掲載された。



急接近!衝突直前のブラックホール、初観測
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20101130-OYT1T01171.htm


 同天文台の井口聖准教授らは、2003年に発見したふたつのブラックホールが放出する電波を3年間以上にわたり観測。その結果、大きい方の質量は太陽の12億倍、小さい方は8億倍あることが分かった。電波の強度が変動する周期などから、双方の距離は0・02光年(1900億キロ)しか離れておらず、急接近していることも突き止めた。500年前後で衝突し、一つに合体すると予想される。


二つのブラックホールが衝突しつつあるという記事であるが,小さいほうのブラックホールでも太陽の「8億倍」(太陽の質量は,惑星や銀河の質量を表す単位として用いられる.参照「太陽質量」)で,それらは0・02光年(1900億キロ)「しか」離れておらず,500年後にぶつかるという衝突「直前」の状況にあるというから,いかにも天文学的な,スケールの大きい話である.


このような,無限ともいうべき宇宙の大きさを実感できるサイトとして,以下のウェブページがある.


Nikon | ニコン チャンネル | ユニバースケール
https://www.jp.nikon.com/company/corporate/sp/universcale/


私はこのサイトが好きで,ときどき訪問する.この映像を見ていると,宇宙の大きさが文字通り想像すらできないものであるということが感覚的に分かり,くらくらしてくる.同時に,この宇宙の大きさに比較して,我々人間が如何に小さな存在であるかということも実感することができる.すなわち,宇宙に比べたときの人間の大きさは,人間から見た砂粒よりもはるかに小さなものになるだろう.砂粒にもならないような人間の存在とは,どんな意味があるのだろうか.


こういう思いに至ったとき,私はいつもウィリアム・ブレイク(William Blake)の有名な詩 “Auguries of Innocence” (無垢の兆し) を思い出す.


To see a World in a Grain of Sand
And a Heaven in a Wild Flower,
Hold Infinity in the palm of your hand
And Eternity in an hour


(拙訳)

一粒の砂に世界を見,
野生の花の中に天国を見るには,
あなたの手のひらに無限をつかみ,
ひと時の間に永遠を抱きなさい


宇宙の無限に比べれば,人は確かに砂粒にもならないような存在である.しかし,それでも我々は砂粒ではない.なぜならば,我々は無限を感じることができるからである.そして,無限を感じることができるということは,すなわち,無限を作り出すことができるということだ.人が抱くことができるようなこの限りない思いは,臆面もなく言えば,それはやはり愛という言葉でしか表せないのではないか.


もちろん,このような無限の思いを抱く対象というのは,人によってそれぞれ異なるだろう.また,そうした思いは単なる錯覚にすぎないといわれるかもしれない.しかし,それでも,人はそうした無限の思いを抱く存在であると私は信じているのである.



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