STAP細胞報道に関するささやかな感想

ここしばらく話題(あるいは問題)になっている,STAP細胞に対する報道姿勢であるが,自分がささやかながら思ったことをここに記録しておきたい.


寺田寅彦の「雑感」という小品については以前本ブログでも触れたが(参照: 「博士号取得者が高校教師になるということ」),それに,以下のような記述がある.青空文庫から引用する.この文章の初出は,1928年である.


 日本の科学雑誌が色々ある、中には科学の抜殻だけを満載して中実(なかみ)は空虚なのもあるようである。そういうような雑誌で西洋人の研究発見発明などは下らぬものまで紹介しているが、日本の学者の面白い研究が正当に紹介される事は極めて稀である。たまたま紹介されると、それは新聞の三面記事のようなジャーナリズムの臭味の強烈なものであって、紹介された学者を赤面させるようなものである。


さすがに近年は,「日本の学者の面白い研究が正当に紹介される事は極めて稀」ということはないだろう.しかし,現在の日本のジャーナリズムはどうであろうか.ごく控えめに言っても,上記のような90年近く前の状況と比べて,大きな進歩を遂げたといえるかどうか,疑問に思うことは多々あるのである.



なお,寺田寅彦の熱心な読者からは,どうせ紹介するなら寅彦の「ジャーナリズム雑感」にすべきだとお叱りを受けることだろう.それについては,また今後機会があればこのブログで触れてみたい.


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