LaTeX メモ ― 数式モードに移行せずに特殊な記号を使用する方法

久しぶりに,LaTeX 関係のエントリを書いてみたい.LaTeX メモシリーズで最後に記事を書いたのは,2010年10月15日であるから,ほとんど2年ぶりである.


まず,このエントリの最初に,有用なドキュメントの紹介をしておきたい.


The Comprehensive LaTeX Symbol List (pdfファイル)
http://mirrors.ctan.org/info/symbols/comprehensive/symbols-a4.pdf


これは,LaTeXで使用できる,5913種類におよぶ記号(パッケージを新たにインストールしないと使えない記号も含む)と,それを出力するためのコマンドをまとめた膨大なリスト(164ページ!)である.LaTeXユーザは,ダウンロードしておいて損はないだろう.



今回のエントリは,上記文書に記載されてない内容を含めて書いてみたい.また,上記文書には面白いトピックがいくつかあるので,それについてもそのうち書いてみたいと思っている.



LaTeX の初心者が良くつまづく点として,「|」(縦線),「<」「>」などの記号が,数式モードでしか使えないという点があげられる.すなわち,テキストとして使用するのであっても,たとえば $|$, $<$, $>$ などと入力しなければならないのである.

(そもそもこの「$」記号のキーボード入力がスムーズにいかず,思考やリズムを中断させてしまう点が大きな問題である)


これらの記号をテキストモードで不用意に使用して,dvi ファイルで感嘆符を逆にしたような記号(\textexclamdown と呼ばれるもの,図1参照)が表示され,とまどったことがある方も多いのではないか.また,アスタリスク「*」も,数式モードとテキストモードでは,その処理が微妙に異なっている.


以前のエントリで書いたように,LaTeX は原則として文書の論理的構造を記述するものである.したがって,テキスト中に縦線を使いたい場合,それをわざわざ数式モードにして表示しなければならないというのは,やはり違和感を感じる (このように実装される理由としては,縦線は数式の中ではまわりの部分にあわせて長さが調節されるなど,特殊な処理が必要であるから,ということではないか).


いずれにせよ,LaTeXでは,実は,「|」「<」「>」などの記号を,数式モードに移行しなくても使えるようなコマンドが用意されている.すなわち,それぞれ,\textbar, \textless, \textgreater といったコマンドをテキストモードで直接入力すれば,数式モードでなくともそれらの記号を出力できるのである.私個人としては,\textbar をよく使う.


こういったいくつかの記号の入力方法と,その出力結果を図1にまとめてみた.特に,モードによるアスタリスクの扱いの微妙な違いに注意されたい.


図1



その他,数式モードでしか使えないが,よく使う文字として,ギリシャ文字がある.テキストモードでギリシャ文字を扱えるようにするパッケージとして,以下のものがある:


textgreek パッケージ
http://www.ctan.org/pkg/textgreek/


このパッケージがどのようなものかは,上記の説明から予測がつくだろう.詳しい使用法についてはパッケージのドキュメント(pdfファイル)をご覧いただきたい.念のため,上記パッケージを使用した場合の,コマンドと出力の関係を図2に示しておく.


図2



textgreek パッケージの注意点としては,\textmu の扱いがあげられる.すなわち,textcomp というパッケージで既に \textmu というコマンドが定義されているため,textgreek パッケージと textcomp パッケージを併用する際には,textgreek パッケージは \textmu コマンドを再定義することはしていない.しかし,これらのパッケージを併用するときは,textgreek パッケージの \textmugreek と textcomp パッケージの \textmu を区別して使用したほうがよいだろう.いずれも出力は同じである.




最後に蛇足であるが,エディタとして Emacs を使用する場合,「$$」や「()」の入力に便利な Elisp パッケージとして,auto pair mode がある.私はこのパッケージをマイナーモードにして常に使っているが,これも期待どおりの挙動をしないことがあるので,問題がすべて解決されるわけではない.


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