LaTeX メモ ― 適切なコマンドを使う

今回,予定を変えて,LaTeX に関するエントリを書いてみたい.


LaTeX には,数式や文章を記述するために便利なコマンドが数多くあるが,適切なコマンドを選択するようにしなければ,見栄えの良い文書を書くことは難しい.そのようなことはもちろんマニュアルや解説書に書いてあるのだが,特に,LaTeX を使い始めの人などが,自分の知っているわずかなコマンドのみを使い,適切なコマンドを使わないといったケースはよく見受けられる.そして,それを立て続けに見せられると,げんなりする(今回のエントリの動機でもある).


そこで,非常に基本的ではあるのだが,以下に,典型的な場合における適切なコマンドの例について書いてみたい.知っている人にとっては当たり前の話なのだが,LaTeX を使い慣れた人でも,稀に適切でないようなコマンドを選択するケースもあるため,それなりに有用なのではないかと考えている.


前提


以下では,例によって amsmath パッケージの使用を前提とする.



2重積分で \int\int を使うような状況では,\iint を使う


2重積分の記号として \int を二つ並べるのでは,スペースが空きすぎてしまう.LaTeX の本によっては,スペースを縮めるためのコマンドの \! を併用しているものもあるが,やはり \iint が簡便できれいな出力が得られる.図1を参照.


図1


多重積分用のコマンドとしては,その他 \iiint, \iiiint, \idotsint などがある.



アングルブラケット(山かっこ)には,「<」「>」ではなく,\langle, \rangle を使う


ベクトルや量子力学におけるブラケットを記すためには,「<」「>」ではなく,\langle, \rangle を使う.「<」「>」はあくまでも不等号である.これについては,図2を参照されたい.どちらが美しい出力になっているか,一目瞭然である.


図2


なお,量子力学におけるブラケットベクトルを記述するためには,braket.sty を使ったほうが簡単である(参照:LaTeX メモ - ディラックの記法と cases 環境



「||」ではなく,\| を使う


これについては,図3を参照されたい.やや見づらいが,「||」をコンパイルした出力結果では,縦線の間のスペースがやや広いのに対し,\| の出力では,適切にスペーシングされていることが分かる.


図3


なお,本来は,\| の組ではなく,\lVert, \rVert を使うべきである.この理由については,LaTeX メモ - 数式における「|」 (縦線,vertical bar)の扱い(その1)を参照されたい.



二項係数には pmatrix ではなく \binom を使う


これも,ソースを見たほうが分かりやすい.以下に例を挙げる:


\begin{pmatrix}
  n \\ k
\end{pmatrix}

\quad\text{vs.}\quad

\binom{n}{k}


上記の LaTeX ソースをコンパイルすると,図4のようになる.


図4


\binom を使った記述のほうが,量も少なくかつ出力もきれいであることが分かる.



差集合の演算子には,\backslash ではなく \setminus を使う


差集合の演算子としては,普通にマイナス記号(-)を用いてもよいが,バックスラッシュ記号(\) が好まれる場合がある.ただし,その際には,\backslash ではなく \setminus  を使うことが推奨される.以下に例を挙げる.


S \backslash \{x\} \quad\text{vs.}\quad S \setminus \{x\}


をコンパイルすると,図5のようになる.


図5


・・・


以上のようなことを書き出すときりがないが,特によく目につくものを挙げてみた.今後,追加していくかもしれない.



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