ブログ開設13周年と「懶惰の歌留多」
もう半年も前の話になるが、今年の6月に、以下のような毎年恒例のメールが来た。
日付: 2018/06/18 8:04
件名: 祝ブログ開設13周年!
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ブログを開設してから、もうすぐ13周年!!
●━━━━━━━━━━━━━━━━━━━○ウェブリブログに登録してから、あと2日で13周年になります。
ウェブリブログ事務局のまーさです。
ご利用いただき、ありがとうございます!
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時機を失した感はあるが、本ブログの一年の区切りに、なぜ私はブログを書くのかといったエントリをまとめるのが恒例であった。しかし、大したブログでもないのに、そんなエントリを書くのも滑稽である。そこで、もっと気楽にエントリを書いてみたい。
すると、年末ということもあり、今年一年のことが胸に去来する。今年は本当にいろいろあった。私の人生でも強く印象に残る一年になるだろう。その結果、仕事の成果を残したいという渇きにも似た思いが胸に刻まれることにもなった。
このような思いを感じるとき、太宰治の「懶惰の歌留多」という作品のことを思い出す。
「懶惰の歌留多」は、文学的には評価されていないだろう。文中にあるように、締め切り間際に書き上げた、駄文と言えないこともない。しかし、そこには、太宰の小説家としての苦闘や苦悩を、窺わせるものが確かに存在するのである。
たとえば、以下のような文章がある。
苦しさだの、高邁だの、純潔だの、素直だの、もうそんなことは聞きたくない。書け。落語でも、一口噺でもいい。書かないのは、例外なく怠惰である。おろかな、おろかな、盲信である。人は、自分以上の仕事もできないし、自分以下の仕事もできない。働かないものには、権利がない。人間失格、あたりまえのことである。
文章を紡ぎだすときの身悶えするような悪戦苦闘の中で、自らを奮い立たせようとする。それはまさに、創造の苦しみに他ならない。
そして、創造の煩悶ののちに、太宰はある境地に達したかのように見える
戦争と平和や、カラマーゾフ兄弟は、まだまだ私には、書けないのである。それは、もう、はっきり明言できるのである。絶対に書けない。気持ちだけは、行きとどいていても、それを持ちこたえる力量がないのである。けれども、私は、そんなに悲しんではいない。私は、長生きをしてみるつもりである。やってみるつもりである。この覚悟も、このごろ、やっとついた。私は、文学を好きである。その点は、よほどのものである。これを茶化しては、いけない。好きでなければ、やれるものではない。信仰、―― 少しずつ、そいつがわかって来るのだ。
こうした思いを吐露する太宰に、しみじみ胸を突くものを感じる。長生きしたいという述懐は、「困惑の弁」など他の作品にもあり、太宰の偽らざる心境であったろう。
しかし、長生きをしてやってみると書いた太宰は、38歳の若さで自死した。太宰にとって、希望ということ、そして信仰とは、何だったのだろうか。
この作品を読むと、私は、何か衝動に駆られるような思いにとらわれる。「書け」。そんな気になってくるのだ。
ブログでも仕事でも、とにかくアウトプットしよう。それが評価されるとかどうでもいい。とにかく書こう。何かを創造しよう。こつこつとそれを積み上げていく。その過程で人に何かしら通じることがあるかもしれない。その意思にこそ未来があり希望がある。
「懶惰の歌留多」は、タイトル通り、「いろは」の各音について断章がある。しかし、すべての項があるわけではなく、「よ」の音で作品が終わっている。
「よ」、夜の次には、朝が来る。
この短い言葉に、太宰の祈りが込められている。そこに表れているのは、信仰だったかもしれない。
しかし、朝が来たとしても、また夜が来るだろう。そこで、太宰は命を絶った。
それでも、生きていれば、再び朝が来るのだ。人生は、その繰り返しである。生きてさえいれば、チャンスはある。だから生き抜こう。それが、今の私にとっての信仰なのである。
***
今年は本当にいろんなことがありました。その中で、本ブログも13周年を迎えました。
何とかこの世をサバイブして、生きている限りは細々とでもブログを更新するつもりです。今後ともよろしくお願い申し上げます。
関連エントリ:
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