本をあまり読まない中高生に薦めたい10作品(その2)
(その(1)からの続きです)
(6) 僕に踏まれた町と僕が踏まれた町
中島らもの作品として「ガダラの豚」がよくお勧めされますが,鉄板すぎてチョイスとしては食傷気味ですね.そのかわりに,ここではこの作品をお勧めしたいと思います.著者のエッセイ集ですが,ひとつひとつのエッセイが短く,本を読まない中高生でも気楽に読めると思います.そして,灘校で落ちこぼれていた著者の中高時代,モラトリアムとしての大学時代,人が生きていくということ,そして死ぬということについて,読後に何らかの余韻が残るはずです.
追記 2016年2月28日
この本について,以下の記事を書きました.
(7) 人魚姫
大ヒットした映画「アナと雪の女王」は,アンデルセンの「雪の女王」に基づいており,アンデルセンの名前を知らない中高生は少ないでしょう(多分).アンデルセンの雪の女王は私の大変好きな話でもあるのですが,ここでは「人魚姫」をお勧めしたいと思います.あるきっかけで人魚姫は,人間の王子に恋をします.そこで人魚姫は,人間になれるよう魔女にお願いをするのですが,魔女は,その代償として,人魚姫の大事なあるものを要求するのです.多くの童話を残したアンデルセンの作品の中でも,最も美しく,そして悲しい物語です.
(8) メルヒェン
ノーベル文学賞を受賞した,ドイツの代表的な作家であるヘッセには多くの名作がありますが,その入門として,中高生の皆さんにおすすめしたいのが,この短編集です.その中でも,「アウグスツス」という作品を是非読んで貰いたいと思います.主人公アウグスツスの母は,息子のアウグスツスが誰からも愛されることを望み,その結果,アウグスツスは誰からも愛されるような人生を送ります.しかし,アウグスツスはそれで本当に幸せだったでしょうか? 愛とは,人生とは,といったことを考えさせられる名作であり,私は何度読んでも泣いてしまうような作品です.
(9) 大泥棒ホッツェンプロッツ
私の大好きな児童文学作品の一つです.海外の作品の挿絵って,日本のものと違う独特の味があって好きなのですが,この作品の挿絵も素晴らしいです.そしてこの作品の素晴らしいのは,料理がとにかくおいしそうなのですね.生クリームをたっぷりかけたプラムケーキ,焼きソーセージとザワークラウト,シュトロイゼル・クーヘン,チョコレート・ドーナツ,ニシン巻きカボチャ等々,とにかくおいしそうなのです(ビールが出てこないのが唯一の不満なのですが,子供向けだからしようがない).まじめな話,ストーリーとしても大変よく出来てて,わくわくするほど面白いです.3作のシリーズですが,一作目が一番よく出来ています.
(10) Yの悲劇
本格推理小説の巨匠,エラリー・クイーンの名作の一つです.この作品には個人的な思い入れがあって,この本は実家にあって,多分小学4年生か5年生のころ,私が生まれて初めて読んだ文庫本なのですね.そういう個人的な事情はおいといたとしても,傑作です.私はこの本の影響で,中学時代は主に推理小説ばかり読んでいました.クイーンの文庫本はほとんど読んだと思います.何故か高校生になると,憑き物が落ちたかのように推理小説は読まなくなってしまいましたが.
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補遺
以下,10作品という制約が無かったら追加しようと思っていた作品です.今後,さらに追加していくかもしれません.
- 宮本輝「蛍川」
- エーリッヒ・ケストナー「飛ぶ教室」
- 遠藤周作「沈黙」
- 三浦綾子「氷点」
- 森鴎外「雁」
- ミヒャエル・エンデ「モモ」
- アレクサンドル・デュマ「モンテ・クリスト伯」
- 北杜夫「さびしい王様」
- 犬養道子「人間の大地」
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